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まだまだあるけど、取りあえずここまで。 |
エンジェルのなんでも相談
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ある小さな町に、若い夫婦が住んでいました。 小さな家に小さな庭。 二人はとても愛し合っていました。 妻は夫を頼り、夫は妻をいたわり、二人は幸せに暮らしていたのです。 二人は子供が欲しいと強く願っていました。 特に妻は、毎日毎日、赤ちゃんができますように・・とお祈りをしていました。 しかし、いつまで経っても二人に子どもはできませんでした。 「あなた、どうして赤ちゃんができないのかしら・・」 「分からないよ・・・そうだ。」 夫は何を思ったか、分厚い電話帳を持ってきました。 「どこかに相談してみようよ。」
「でもあなた、検査、検査はイヤよ!」 「わかっているよ。きっと何か他にあるだろう・・・」 夫は電話帳をめくりました。 赤ちゃん、とか、妊娠、とか、色々な項目で調べました。 たんねんに見ていると、あるユニークな広告が夫の目にとまりました。 『エンジェルのなんでも相談〜家庭のこと、夫婦のこと・・・エンジェルが悩みを解消いたします。悩んでないでお電話を!フリーダイヤル 0120−***-****』 夫は半信半疑でしたが、受話器を取り、ダイヤルしました。 「毎度ありがとうございます。エンジェルのなんでも相談でございます。」 低く乾いた女性の声が聞こえました。 「あのぉ、ちょっと相談がありまして・・・」 「はい、どのようなご相談ですか?」 女性があまりにも事務的なので、夫はたじろぎましたが、 「実は、あの・・・子宝に恵まれないので・・・」 電話に出た女性は、淡々とした口調で 「明日の午後、お宅にお伺いいたします。ご住所とお電話番号を・・」 と言いました。 夫は聞かれるままに答え、受話器を置きました。
翌日の午後、呼び鈴が鳴りました。 夫がドアを開けると、金髪で白いロングドレスを着た女性が立っていました。 「エンジェルのなんでも相談です。」 夫は、瞬時に電話の時と同じ人だと分りました。 低く響くその声は、一度聴いたら忘れられないからです。 「どうぞ」
夫は女性を部屋に招き入れました。 夫と妻は、女性と向かい合って座りました。 「お悩みは、お子さんを授かりたいとのことですね?」 あまりに単刀直入なので夫婦は絶句しましたが、一呼吸おいて夫が 「そうです」 と答えました。 女性は夫婦に、庭へ出るように言いました。 夫婦は言われる通りにし、二人に続いて女性も庭に出ました。 夫は庭に出る途中で、きっとこの女性がエンジェルなのだな、と思いました。 そして少し怖いような気がしました。 女性は夫婦に言いました。 「これから私が合図をしたら、二人共目を閉じてください。私が、1、2、3、と言ったら二人同時に目を開けるのです。二人の息が合っていれば、目の前に、今と違う情景が見えるでしょう。それが見えたら、素早く何か行動してください。なんでもいいのです。お二人が力を合わせて何かをしてもいいし、別々に何かをしてもいいのです。とにかく、すばやく行動するのです。そうすればあなた達の悩みは解消されるでしょう。」 そして一呼吸おいて、こうも言いました。 「でも、二人息を合わせて目を開けるのは、思っているよりも難しいのですよ。だから三回挑戦できるようになっています。いいですね?チャンスは三回です。」 言い終わると、女性は二人から少し離れて深呼吸をしました。 「では始めますよ。用意はいいですね?」 夫婦はあわてました。まだ気持ちの準備も何も出来ていませんから。 だけどそうも言ってられません。 夫は言いました。 「さぁ、がんばろう。二人の赤ちゃんのために。」 「でもあなた、私なんだか怖いわ。」 「大丈夫だよ、僕がちゃんと手を握っていてあげるから!」 そう言って夫は妻の手を握りました。 二人はしっかりと手をつなぎ、目を閉じました。 「それでは始めます。お二人ともしっかりと目を閉じていますね。」 なんでも相談のエンジェルは、もう一度確認するように言って、少し間をおきました。 「1、2、3!」 夫はその瞬間、パッと目を見開きました。妻の手をしっかりと握ったまま。 しかし、目の前にあるのはいつもと変わらない小さな庭でした。 隣の妻を見ると、今にも泣き出しそうにしています。 「あなた、ごめんなさい。私、私・・・。」 妻は恐ろしくて、「3」の声を聞いてすぐ眼を開ける事が出来なかったのです。 エンジェルは言いました。 「奥さん、まだ二回残っていますから、大丈夫です。それでは二回目行きます。用意はいいですね。」 エンジェルはやはり事務的でした。 夫はそのことが少し気に入りませんでしたが、仕方がありません。 今度は妻をぐっと抱き寄せました。 「さぁ、安心して。僕がこうして抱いていてあげるから・・・いいね。3の声を聞いたら、目を開けるんだよ。」 妻は黙って頷きました。 二人はしっかりと抱き締め合いました。
「1、2、3!」 夫は眼を開けました。 しかし、やはり目の前にはいつもの庭しかありません。 妻はやはり怖くて目を開ける事が出来なかったのです。 それから妻はしばらくうつむいたまま何一つ話しませんでした。 ですがしばらくすると、すっと目線を上げ、夫をまっすぐ見つめました。 「あなた、私もう覚悟を決めました。だって、どうしても赤ちゃんが欲しいのですもの!この次の一回は絶対に失敗しないわ!」 夫はまた妻の手を取ろうとしましたが、妻は、大丈夫よ、と言って手を出しませんでした。 そして夫婦は手もつながずに、二人並んで三回目を待ちました。 「1、2、3!」 妻は、ヤッと目を開けました。そこには広くて黄色いお花畑が広がっていました。 さぁ、次は行動です。 妻は一瞬戸惑いましたが、すぐにお花畑の中にずんずんと入って行きました。 すると黄色いお花畑の中に、一輪だけピンクのお花が咲いていました。 妻は、これだ!と思いました。 きっとこれが赤ちゃんなのだと!そう思うとすぐにそのピンクのお花を丁寧に摘みました。 ピンクの花を手に、妻は視線を感じる方へ振り向きました。 そこにはエンジェルがニコニコしながら立っています。 手には小さな花瓶を持っています。 「奥さん、その植物を大切に育てるのです。さぁ、これを使って・・・」 花瓶を妻に渡しました。 妻はそのお花を大切に育てました。 お花は信じられないほどに大きく成長して行きました。 妻は花瓶を植木鉢に換え、それでもまだ成長し続けるので、終には庭の真ん中にそのお花を植えました。 お花は成長し続け、一本の立派な木になりました。 その木は、沢山の実を付けました。 野球のボールほどのピンクの果物です。 妻は喜んでその実を摘み、口にしました。 とても甘くておいしい果物でした。 しかし、あまり沢山実っているので、とても一人では食べきれません。 妻は、道行く人に持って帰ってもらおうと考えました。 まず、きれいなお皿をいくつか用意し、果物を三つずつ並べました。 家の前の通りからよく見えるところに小さめのテーブルを出して、清潔なテーブルクロスを掛け、その上に果物を載せたお皿を、センスよく配置しました。 妻は「よし」と言って満足げにそれを眺めていました。 そこへ、一人の女性が通りかかりました。 そしてこう言ったのです。 「まぁ、美味しそう!一皿おいくらですか?」 妻は一瞬驚いて絶句しましたが、今までになかったイタズラ心が湧き上がり、内心ドキドキしながらも 「500円です」 と言いました。女性は 「一皿下さいな。」
と、妻の手に硬貨を渡しました。 妻は思いました、これはイケるぞ! それからの妻はもう夢中でした。 どうしたら果物がたくさん売れるか、それだけを考えていました。 きれいな紙でギフト包装をしたり、お祝いやお見舞いののしを用意したり、宅配業者と提携し、産地直送をしたり・・・ 考えても考えても、商売繁盛へのアイディアは尽きることがありませんでした。 「1、2、3!」 夫はヤッと目を見開きました。 そこには一面黄色のお花畑が広がっていました。 よし!次は行動だ!と夫は思いました。 でもいったい何をしたら良いのでしょう。 夫は一瞬ためらいましたが、すぐに膝まづきました。 赤ちゃんのためです、とりあえず何か行動しなくては・・・ 夫は目の前にある黄色の花を摘みました。 一つ、また一つと摘みました。夫は夢中でした。 花を摘み続け、気が付けば抱えきれないほどの大きな黄色の花束が出来上がっていました。 ふと目線を上げると、そこにエンジェルが立っていました。 微笑みながら夫を見つめています。 金色の髪に深いグリーンの瞳。 あぁ、なんて美しいのでしょう!なぜ今までこの美しさに気が付かなかったのか!? 夫は立ち上がり、エンジェルに近づきました。 いったい何んと話しかけたら良いのか!こんな気持ちは初めてでした。 夫は自分が抱えているたくさんの花にようやく気づき、照れくさそうに言いました。 「この花を、君に・・・」
エンジェルは黄色い大きな花束を受け取りました。 「まぁ、私に!?ありがとう!あぁ、なんてきれいなお花なのでしょう!」 エンジェルは、その花束に陶器のような白い顔を近づけて、甘い香りを吸い込みました。 そして、うるむようなグリーンの瞳で夫を見つめました。 夫は知らず知らずのうちにエンジェルの腕を取り、強く引き寄せていました。 金色に波打つ長い髪からは、洗って乾かしたばかりのような清潔な香りが漂ってきます。 やがて二人は燃えるような口づけをしました。 そして腕を組み、黄色のお花畑の向こうへ歩いてゆきました。 妻も夫も、願い通り、二度と赤ちゃんが欲しいと悩むことはありませんでした。そして二度とお互いを思い出すこともありませんでした。 めでたしめでたし(?) |
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まだまだあるけど、取りあえずここまで。 |







